ささやかなご褒美のススメ
私はこれまで「ご褒美」というものを都合良く使っていた。
・出先で美味しそうなケーキを見つけた時
・ちょっとお高いヘアクリームを見つけた時
・沖縄旅行の記事を見つけた時
「いつも頑張ってるし」
「いつも我慢してるし」
「いつも節約してるし」
⇒「今日は自分へのご褒美だ~!!」
こんな感じで「ご褒美」を使っていたのだが、心理士として仕事をしてからはちょっとご褒美の使い方が変わってきた。
もちろん、これまでのような都合の良い魔法のような使い方は健在である。
つい使っちゃう。だっていつも頑張ってるもん。いつも頑張って生きてるもん。
そんな私に、【トークン】としての使い方が新たに増えたのだ。
トークンという言葉を聞いたことがある人もいるかもしれない。
心理士業界の中でもとりわけ「療育」とか「ペアトレ(ペアレントトレーニング)」とかの領域で良く用いられる言葉である。
トークンの日本語訳は「報酬」。
例えばペアトレでは、「子どもが良いこと(好ましいこと)をした時にトークンをあげましょう」と説明する。
忘れ物の多い子ども:「毎晩ランドセルの中身を用意して、ママに確認してもらったらトークン」
こんな感じでトークンを使っていく。
トークンの種類は何でも良い。
何でも良いが、出来るだけ簡素なものが良い。
特に子育てで用いる場合は、養育者にとって時間的にも手間を考えても負担が少ないものが良い。
例えば、スタンプを押すこと。
そしてそのスタンプが10コたまったら、おやつがちょっと豪華になる。
スタンプを押すだけなら、スタンプを100均で購入、押すのは数秒、という手軽さだ。おやつが豪華になるのも、その子が好きなものを1つおまけする程度で良い。
こんな具合だ。
お金をかけすぎると家計の負担にもなるし、そもそも子どもが“豪華な見返り”がないと頑張れない子どもに育ってしまう。
手間という視点で考えてみても、例えば「これを頑張ってくれたら、1時間遊んであげるよ~」と約束しても、子育てをする養育者にとって1時間も遊びに付き合うことは時間的にも体力的にも難しいのではないだろうか。
そんな、“継続が難しい”トークンはNGだ。
手軽な、ささやかな、それでいてちょっと嬉しい、そんなトークンが魅力だ。
トークンの内容を充実させるのではなく、トークンを受け取った時の充実感や達成感を味わうことが目的だと考えた方が良い。
自分の行動が正しいと分かる、自分の行動で親が笑っている(幼い子どもにはとっても嬉しいことです)。その上で、『しかもご褒美ももらえる(お得感)』という感覚を覚えてもらい、好ましい行動を増やしていく、というのがトークンを用いた養育である。
このトークン技法、大人でも使える。
しかも大人は、自分で設定して、自分でトークンを与えることでも意外と満たされる。
それが、冒頭で述べた「ご褒美というものをトークンとして使う」ということである。
都合の良いご褒美と違い、トークンとして使うご褒美はもう少し戦略的である。
やり方は簡単。
先にご褒美を設定しておく
これだけ。
このご褒美は、自分が今から頑張ろうとすることの大きさによって、設定する内容が変わって来るだろう。
とにかくズボラで怠けものな性格である私の場合、
正直、お風呂に入ることさえ心底面倒くさい時がある。
でも、入らないといけない。
だって、お風呂に入らずに寝てもなんだか疲れが取れないから。
でも、本当に、心底、めちゃくちゃ、面倒くさい。
そんな時に、頑張るきっかけを与えてくれるのが「トークン」である。
驚くほど些細な頑張りなので、ご褒美は「ミニストップのバニラソフト(220円)」(5回の頑張りで1つゲット!)である。
子どものお小遣いでも買えるくらいの、ささやかすぎるご褒美だ。
でも、これで良いのだ。これくらいの値段じゃないと、続かない(ご褒美が)。
大きな頑張りは意外と出来るものである。
仕事も、人間関係も、大きいものはご褒美がなくてもやってのけてしまう。たぶん「給料」とかその他もろもろの“ご褒美”があるからだろう。責任感もあるし、『仕事だ』と割り切ることも出来る。
しかし、日常生活のちょっとした頑張りは意外とご褒美がないものだ。
何故なら、「やって当たり前」だからだ。
やって当たり前なのかもしれないが、それでもやっぱりしんどい時はある。
当たり前だからこそ、どんな状態でも逃げられず、しんどいのだ。
だから、ささやかなご褒美を設定しておく。
普段当たり前に出来ることが、なんだか出来ない時のために。
ソフトクリームでも良いし、ちょっとリッチな入浴剤でも良い。
スタバで1時間のんびりする、でも良い。
経済的にも時間的にも継続可能な手ごろなご褒美をトークンとして有効活用してみると、毎日の生活がちょっとだけゲームみたいに楽しくなったりもするから、オススメだ。