井の中の蛙 ジンベイを知らず

されど、ほにゃららの深さを知る

それぞれの回復の仕方

例えば同じうつ病でも、回復の仕方はもちろん人それぞれである。

生物学上の要因もあるだろうし、環境要因も非常に大きい。これまでの本人の経験も影響するかもしれない。

 

この世には色んな病気があるが、
精神的な不調からの回復には、ざっくり分けると2通りあるような気がしている。(だいぶ乱暴な分け方ではあるが)

 

◆ひとつめ◆

1つは、クマが冬眠から目覚めるように、ケロッと治る感じ。

子どもに多い印象。もちろん大人もいる。
比較的経過が短い人はこの傾向にある印象がある。

 

例えば、職場の人間関係や仕事内容に問題を抱えてしまって鬱々していたクライエントさんが、部署異動をきっかけにこれまでの明るさを取り戻した、というようなケース。

 

治療や支援が本人の何かにフィットするとあっという間に回復していく。

まさに“順調に”回復していく。本人も回復の感覚がつかめている。

 

 ◆もうひとつ◆

もう1つは、行きつ戻りつしながら回復していくパターン。

なんなら「回復」という言葉が、ちょっとしっくりこないかもしれない。

「回復」というよりも、なんだろう…。「転換」…???んーー。良い言葉が見つからない。

 

このパターンは、「回復」までに少し時間がかかる。

先ほどのパターンが、回復している感覚をつかみやすいものだとしたら、このパターンは、回復の感覚を勘違いしやすいのだ。

 

『回復したかな?』『なんかちょっと元気になってきたな』と感じるのだが、その後すぐにまた “落ちる”。

たぶん、本人としては回復した感じがあるから、そこで以前の生活に戻ろうとしてしまうのだろう。でも本当はまだ完全には回復していないので、そういう無理をすると不具合が生じてしまう。

 

このパターンは、以前の生活や以前の自分らしさを“取り戻す”というよりは、“新しい自分になる”という感覚のほうがしっくりくるのかもしれない。

 

以前の自分と今の自分を合わせて、新しい自分にする

 

“新しい”から、これまでと勝手が違うことも多い。その違いを試行錯誤する必要がある。

たぶんこの試行錯誤の時間が、「回復したと思ったけど、また元気なくしちゃって」という振り子のような状態を生んでいるのだと思う。

 

このパターンの時に特に注意したいのが、回復を焦らないということ。

回復を焦ると、“新しい自分”を上手くコントロールすることが出来ないまま終わってしまう。すると、以前の、使い慣れた自分で生活をしていくことになるのだが、それはまた同じ結果を生み出してしまうのだ。

 

回復を焦るのは、本人だけじゃない。

周りの人もそうだし、学校や会社も焦らせてくる。

 

でもそれは仕方ないことだとも言える。

社会は一定のスピードで動き続けているのだから、まさにその中で生きる人たちは、クライエントの様子を見て焦りもするだろう。

それが、“クライエントのせいで”、仕事が滞っていたり、自分の評価が下がってしまうのであれば、焦るなんて言葉では済まないくらいのものもあるだろう。

 

だからせめて、心理士だけでも、クライエントの回復を焦らないでいたい。

焦らない人がクライエントの周りに増えると、クライエントは落ち着いて回復が出来るような気がしているから。

 

焦らず、どっしりと構える心理士になろう、と再び決意した日でした。