井の中の蛙 ジンベイを知らず

されど、ほにゃららの深さを知る

夜の招かざる訪問者

私は旦那さんであるゲロゲロと6階建のマンションの5階の一室に住んでいる。広いLD部分に惚れて即決した。

 

 

4月になったばかりのその日は、ゲロゲロは職場の新人歓迎会で帰りが遅くなる日だった。夜に桜の木の下で宴会をするらしい。毎年の恒例行事だ。

 

私は仕事から帰り、4人掛けテーブルの片隅を使って簡単な夕食を摂った。

 

広すぎるリビングは、ソファーとTVを置いてある空間と、食事をするためのテーブルを置いてある空間とに分けている。

今はテーブルのある空間だけ電気を点けているので、あちら側はすこし薄暗い。

あちら側に目を向けると、日中に取り込んだままの洗濯物がカーテンレールに引っかかっている。ゲロゲロが帰ってくるまでに片付けなきゃなぁとぼんやり思った。

 

アマゾンプライムで気になっていた映画(『恋妻家宮本』という阿部寛天海祐希が主演のもの)を見ながら、用意した夕食をだらだらと食べ進める。それでも2,30分もしないうちに終わってしまった。

 

恋妻家宮本

恋妻家宮本

 

 (↑↑今ならアマゾンプライムで見れる!ほんわかした良い映画だった

 

一旦停止して、食器を片付けるためにキッチンへ。テーブルに戻る際に、戸棚からチョコを取り出した。

 

映画を見終わるともう22時前になっていた。

 

お風呂に入らなきゃなぁという気持ちがありながらも、スマホSNSを見てダラダラと時間を浪費していた。

どうせゲロゲロが帰ってくるのは0時くらいだろう。それまでたっぷり時間はある。存分にダラダラしよう。

 

映画も終わり、静かになったリビング。

 

SNSに熱中する私。

 

そして、かすかな物音。……物音?!?!

 

ガサッ…ガサッ…

 

ガサガサッ…

 

完全に聞こえた。認識してしまった。と同時に、その音の方向に目をやった。

 

ソファーのある薄暗い空間。

その真っ白い壁の真ん中に、黒い影が不規則に浮遊していた。

 

壁に当たるたびに「ガサッ……ガサッ…」と音を立てている。

 

たぶん直径6~7cm。めっちゃデカい。とにかくデカい。

しかも飛んでいる。めっちゃ怖い。

 

そう思った矢先、その影が明るいこちら側に向かって飛んできた。

 

心の中で悲鳴を上げた。

そして何を思ったか、一番近くの空間であるキッチンに逃げ込んだ。

 

キッチンには窓もなく、完全に行き止まりの狭い空間である。私はとっさにアホな選択をしてしまった。

しかし、すぐ目の前には“何か”が飛んでいる。キッチンから出て玄関に逃げる勇気はなかった。

 

その“何か”はリビングの電気に向かって飛び、電気に当たっている。

バサバサッ…バサバサッ…」と、物体が電気カバーに当たる音がしている。

 

蛾だ。たぶん、蛾。

大の虫嫌いで、虫のことなんてこれっぽっちも詳しくない。でもあれはたぶん、蛾。

しかもめっちゃ胴体しっかりしてるバージョンの蛾。まさにモスラ

S.H.モンスターアーツ モスラ成虫 (魂ウェブ限定)

 (↑↑参考画像…こんなのだった気がする。うん。これ。うん。)

 

まじでやだ。

あの予想できない、不規則で、意味不明な動きがたまらなく怖いし気持ち悪い。

 

リビングの電気にぶつかりながら飛んでいるモスラの様子をキッチンから恐る恐る伺っていたら、なぜかキッチンに向かって飛んできた。

 

完全に悲鳴を上げた。モスラ、来た。なんでこっち来るんだ!!?!!!?!!

モスラがこの狭いキッチンに入って来るなんて、気が気じゃない。

私はキッチン入り口にかかっている暖簾をモスラに向かって必死にバサバサした。

 

モスラに暖簾が当たることはなかったが、風を感じたのか、それとも私の狂気を感じたのか、モスラが怯んだように見えた。そして、キッチンの入り口から逃げていった。

 

リビングの壁に当たって、また不穏な音をたてている。

 

 

きっとモスラも外に出たいはず…!!!

そう思った私はキッチンから飛び出し、リビングと玄関をつなぐ扉を開け、玄関に逃げた。そして玄関の扉も開けた。

 

これでモスラも外に逃げれる。

 

 

しかし、玄関の外で少し待ってみたが、モスラが出てくる気配がない。

玄関からリビングの様子を伺おうと耳を澄ましたが、先ほどまでの音がしなくなっていた。

 

 

春の夜はずいぶん冷え込む。あまり長い時間外でモスラを待っているのも限界があったが、モスラと鉢合わせしたらと思うと、中に入ることはためらわれた。密室空間でモスラと二人っきりは嫌すぎる。あいつはどう動くか分からない。

 

ゲロゲロがいてくれれば…そう思いスマホを見た。

つい先ほどまでSNSを見て寛いでいたから、スマホを握ったままモスラと戦っていたらしい。スマホが手元にあるのは、なんだか心細さが紛れた。

 

時間は22時過ぎ。ゲロゲロはたぶんまだ飲み会中だ…少なくともあと1時間は帰ってこない。絶望した。

 

でも一応電話してみた。もしかしたら、電話に出てくれて、帰ってきてくれるかもしれない。帰ってきてくれなくても、事情を話せば何か対策を考えてくれるだろう。

…だがやはり、電話は留守番電話サービスにつながった。

 

あまりに外が寒いので、観念して家の中に入ることにした。玄関の扉も閉めた。

 

 

しばらく玄関で怯えていたが、リビングの方からはモスラが飛んでいる気配がしなかった。恐る恐るリビングに近づいた。どんなに耳を澄ましても音はしない。

そのまま玄関に10分ほど身をひそめていたが、どうにもこうにも事態が進展しないため、リビングに入ろうと決意した。どこからか戦う勇気が湧いてきた。

 

クイックルワイパーを手に、リビングの怪しいところを突きまくった。武器を持った私は少し強気になっていた。椅子に掛けていたパーカーを突き、ソファーの上のクッションを突き、床に置いてあるリュックサックを突いた。気になる所は全部突いたが、とうとうモスラは出てこなかった。

 

そんな時、ゲロゲロからLINEが入った。もうすぐ帰るよ~という知らせだった。

私はすぐさま電話をし、事情を説明した。あと30分くらいで着くということで、微妙な時間の長さにちょっぴり落胆した。

 

ゲロゲロが帰ってきてからも、結局モスラは見つからなかった。仕方ないので、お風呂に入り、寝る支度をすることにした。

 

お風呂から上がってきても何故かモスラの気配はまったく感じなかった。夜中にトイレで目覚めた時にモスラと鉢合わせなんてしたら…と思うと恐怖しかなったが、見つからないのでどうしようもなかった。寝ているゲロゲロを起こせば良いだけだ、と言い聞かせ、恐怖心を収めた。

 

 

いつも通りリビングでドライヤーをした。すると、なんとなく物音がした気がした。

急いでドライヤーを切り、耳を澄ます。しばらくすると「バサ…」と音がする。キッチンの方からだ。電気のついていない薄暗いキッチンに目を凝らす。黒い影が見えた。やっぱり急に飛ぶ。怖い!!!でも見つけた!!!モスラ!!!

 

慌ててゲロゲロを呼びに行く。ゲロゲロはお酒も入っていて、すでにベッドの上で寝ぼけていた。可哀想だとは一瞬思ったが、モスラがそのまま居座るほうが嫌だったので、起こした。

大変男らしいゲロゲロは、すぐに覚醒し、モスラがいるキッチンに出動した。

 

そこからは、私はその場から退散していたので詳しくは見ていない。

ゲロゲロがキッチンの明かりを点け、「バサバサッ…」という音が聞こえ、「ガチャッ」と食器がぶつかる音がして、また「ガチャガチャッ…」と食器の音がして、ゲロゲロが「ベランダ開けて…!」と言いながら両手を膨らませてキッチンから出てきた。

 

モスラ捕獲。そして解放。

ゲロゲロはモスラのキャッチ&リリースに成功してみせたのだった。強い漢である。

 

 

これで平和な我が家が戻ってきた。

めでたしめでたし。

 

 

ちなみにモスラはベランダに干していた洗濯物にくっついて侵入してきたと思われる。以前も洗濯物にテントウムシがくっついていて、部屋に入ってきたことがある。

 

 

ずっと前にゲロゲロに「虫の方が怖がってるわ!人間どれだけデカいと思ってんねん」と、虫に出くわしてギャーギャー喚いていた時に叱られたことがあるが、そうは言っても怖いものは怖いし、気持ち悪いし、ぞわぞわする。特に、飛ぶ系は予測不能な動きをするので怖さが増す。

 

これからの季節、洗濯物を取り込む際は気を付けたい。

着任式。

学校が嫌いで先生が嫌いだった私が、この4月から学校現場で働くことになった。

 

 

新任の先生を対象に自己紹介アンケートを記入する時間があり、その中の一つに「中学校時代の思い出は?」というものがあった。

 

なにか嫌な思いをした記憶があるとかそういうのではないが、特別楽しい時間を過ごしたという感覚も薄い。

どう考えても、今の方が楽しい。大人になって方の方が断然楽しい。

 

たまに主人のゲロゲロと「昔に戻れるなら、どの時期?」とかいう、どうしようもなくくだらない話をするのだが、いつ考えてもその問の答えは「別に戻りたくない」となる。

 

そんな私が、今年から学校現場で働くことになったのだ。

ちなみに先ほどの自己紹介アンケートの質問には「修学旅行で行った沖縄でシュノーケリングをしたこと」と書いた。完璧すぎる、無難な答えを書けたと思っている。

 

 

今日は着任式と始業式と入学式があった。

とてつもなく長い時間を学校で過ごした気がする。席に座っていたのは式の間だけで、それ以外はずっと立ちっぱなしだった。緊張もあいまって、肩も腰も足もパンパンになった。学校の先生はえらいよ、としみじみ思った。エネルギーの塊だ。

 

 

入学式に参加し、新入生の生き生きとした表情を目の当たりにした。

真新しい制服、真っ白な上履き、手の甲まで隠れる袖、幼い顔つき。つい数週間前までは小学生だった彼らが、今、中学校の制服に身を包み、入学式に臨んでいる、という事実になんだかじーんとした。彼らのことはまだ何も知らないのに、それでもちょっと感動した。

 

学校嫌いだった私が、こんな心境になっているのに驚いた。

 

人の心は、やっぱり少しずつ変化したり成長したりしていくのだろう。

15年前の心のままなわけがないのだ、ということを感じた日だった。

 

これからここでどうやって働いていくのか、どのような気持ちになっていくのか、その変化が楽しみだ。

修論執筆の1週間⑥(最終回)

>>>昨日のつづき。
>>>1日ほぼぶっ通しで執筆をしていた私。少し眠ることにしたわけだが…

 

 

 

パチッと目が覚め、時計を見ると4時だった。外は薄暗い。

 

まさか…夕方?!?!半日以上寝てしまったのか?!?!

 

恐怖を感じながらケータイを確認する。

なんと、31日の早朝だった。つまり、眠ろうと決めて目を閉じてから1時間も経っていなかった。それなのに、私は8時間くらい寝たような、とてつもない回復感を得ていた。

 

最高だ。

私は冴える頭と、無尽蔵のスタミナを手に入れた。

 

 

なんとこんな状態が、1月2日の朝まで続いた。

 

 

30日の朝から完全に集中力が開花し、31日、1日、2日とほとんど睡眠も食事も摂らずに執筆にエネルギーを注ぎ込んだ。

全く眠気を感じず、そして空腹感も感じなかった。ずっと同じような体勢なので、身体の痛みを感じることもあったが、それに悩むことはなかった。すぐに切り替えて、また修論の世界に行ってしまうからだ。

 

この4日間で、私の睡眠時間は合計3時間ほど。食事も、カントリーマアム4,5枚だった。

そしてこの4日間のあいだ中、『無敵』という感覚が常にあった。
頭も冴えているし、身体の疲れも感じない。寝ないでも作業が続けられる。お腹が空かないので食事に時間を取られることもない。何も怖いものがなく、まさに『無敵』状態だった。

 

 

 

”無敵状態”が4日間も続いたおかげもあり、1月2日の朝に修論が無事完成した。私はすぐに先輩と指導教官に修論データをメールした。

そして、意気揚々と、私はそのまま実家のある大阪に帰省することにした。

 

 

 

マンションから歩いて15分くらいのところに最寄り駅がある。その駅から東京駅までは20分ほどだ。

 

私は修論からの開放感を胸いっぱいに抱きながら家を出た。
実家でお雑煮を食べよう、買い物に行こう、と色んなことを考えていたら楽しくて仕方なかった。『無敵』すぎて、この4日間の私の睡眠時間と、摂取カロリーのことなんてまったく頭になかった。

 

10分ほど歩いて駅が見えた時、突然目の前がチカチカっと光ったかと思うと、目の前の道が歪み、真っ白になった。そのまま倒れてしまいそうになるのを踏ん張り、歩道の脇に並ぶガードレールに手をかけた。

1月2日の朝10時だ。人通りも車通りも、いつもよりずっと少ない。人も車も全然見えない。こんな所で倒れたら、誰も助けてくれない。意識が朦朧とする中で、その意識を手放さないようにただただ必死だった。

 

こんなことになる意味が、まったく分からなかった。意味不明だった。

しかしすぐに、この4日間、自分の身体を酷使したことを思い出した。

 

 

そういえば全然寝てなかったし、ご飯も食べてなかったんだった…

 

 

膝に手を置かないと立ってられない。本当は地べたに這いつくばりたいが、それは出来ない。やばい人すぎる。

 

 

家に戻ろうかと思った。こんな状態で大阪になんて行けるわけがない。

 

しかし、家に帰るためには、来た道を戻るしかない。それは絶対に不可能だと感じた。10分程度の道のりだが、今の私では何十分もかかるに決まっている。

 

行くも地獄、帰るも地獄。

 

 

駅のすぐ近くコンビニがある。あと少し歩けば、とりあえずそのコンビニには行ける。

そこでウィダーを買おう。とりあえずカロリーを摂ろう。そしてリポDを買おう。栄養を入れよう。

 

私は今にも倒れ込みそうになりながら、膝に手をついたまま、腰を曲げて、死にそうな顔をしながら、必死にコンビニに歩みを進めた。

 

コンビニ店員さんは、私が膝に手を突きながら腰を曲げて必死に歩く姿を見てぎょっとした表情をした。めちゃくちゃ恥ずかしかったが、そうも言ってられない状況だった。

ウィダーリポDを2つずつ購入し、コンビニの前ですぐにウィダーを飲んだ。

少しずつ少しずつ、胃を驚かさないように、ちびちび飲んだ。ゼリーを噛んで飲んだ。

 

あっという間にウィダーのエネルギーが身体に吸収されていくのが感じられた。

そしてすぐにもう1つのウィダーも飲んだ。これでとりあえず、東京まで行けるような気がした。

 

東京に出て、新幹線に乗り、新幹線の中でリポDをこれまたちびちび飲んだ。そして大阪までの2時間半を爆睡した。

 

 

そんな感じで、私の修論執筆は幕を閉じたのだった。

今思うとあれは完全に「躁状態」だったと思われる。

躁うつ病とか、躁病とかあるが、躁状態にいる人はきっとあんな感じなんだろうなと思う。そして、あの「無敵」状態になったら、確かに何も怖くないし、自分が今危ない状態になっていることに気付きにくいだろうな、と実感した。

 

その後、あれほどの「無敵感」は感じたことがない。

正直あまり感じたくない。あれは命を無意識に削ってしまっているような感じがしたから。

 

 

冒頭で「アホな体験」と書いたが、まぁ結果的に何事もなく終わったから“アホな経験”として話せたが、人間は何かの拍子に、知らず知らずのうちに、ここまで身を(命を)削ってしまうということでもある。

そういうこともあるんだということは心理士としてきちんと頭の片隅にとどめておきたい。

修論執筆の1週間⑤

>>>昨日のつづき>>>

 

30日朝。また7時前に目が覚めた。

昨日と同じく、スッキリとした目覚めだ。身体の疲れも感じない。

 

昨日の夜は、昼に食べた卵雑炊が残っていたので、それを食べた。

なんとなくTVをつけ、雑炊を食べながら、世の中が年の瀬であることをしみじみ感じた。TV番組のおかげで時間が分かり、食器をキッチンに片づけに行くついでに入浴を済ませ、寝る準備をすることにしたのだった。

 

 起床し、いつものように作業の準備をする。

顔を洗い歯磨き。部屋着に着替える。髪をしばる。コンロでお湯を沸かす。暖房をつける。ノートPCを開く。資料を広げる。座布団の高さを整えて座り心地良くする。紅茶を淹れる。

 

作業再開。

 

ここから完全に、職人さながらの集中力が全開になる。私のアホな経験の本格的な始まりだった。

 

私は作業をしながら、ふと、ほんの少しの空腹を感じ、時計を見た。するともう14時だった。7時過ぎに作業を開始したから、7時間もの間、特に何も感じることなく黙々と執筆していたということになる。

私は、先日買っておいたチョコレートのファミリーパックを空け、そこから1口サイズのチョコチップクッキーを2つ取り出した。それで十分だった。

 

次に時間に気付いたのは6時間後だった。時計が壊れているのではないかと一瞬疑ったくらい、まさか6時間も過ぎているなんて驚いた。時間の感覚がなくなっていた。

もう夜か。論文執筆も随分捗った。まだまだ完成には程遠いが、遠くにゴールは見えてきた感じがする。

 

空腹感もないし、眠気もまったくないので、とりあえずそのまま作業を続けた。どうせすぐにお腹が空いたり、集中力が切れたりするだろうと思ったからだ。

 

しかし3時間経っても特に何の変化もなかった。空腹感、眠気、疲労感、すべてがゼロだった。なんならエネルギーに満ち満ちていた。そして、ひたすら頭の中が回っている感覚がした。めちゃくちゃ冴えてる。

冴えている状態が心地よく、ゴールも遠くだが見えてきていた、ということもありセーブするのが惜しかった。眠くなるまで、つまり、身体が休憩を求めるまで、出来るところまでやってみよう、と思った。

 

 

深夜3時になり、さすがに腰が痛くなっていた。痛みが認識できるくらいには集中力が切れてきた、と言った方が良いのかもしれない。

作業する机は、地べたに座るタイプのちゃぶ台のようなものだった。いくらお尻の下にクッションを敷いていたとはいえ、何時間もその体勢で作業を続けていては、身体のあちこちが痛むわけだ。

 

伸びをして、そのまま寝そべった。

 

すると少し眠気がやってきた気がした。目をつむると、じんわりと目が痛んだ。

あー、身体は正直だなぁー。心も頭もこんなに元気なんだけどなぁ。

 

残念な気持ちを抱きながらも、少し眠ることにした。

 

 

>>>こんな時に寝てしまって大丈夫なのか?!?!?!明日につづく>>>

修論執筆の1週間④

昨日の続き。とうとうアホな入り口に足を踏み入れます…!!(でもまだ入り口)

 

>>>つづき>>>

 

途中、夕食の時間になったのは気付いた。

しかし珍しいことにお腹が空いていなかった。空腹を感じなかった、と言う方が正しいかもしれない。しかも、集中力が切れた感じもしなかった。

いつもなら、これくらいの時間になると集中力が切れるか、何かボリュームのあるものが食べたくなるのに。

 

そういうわけで、気分転換のクッキングもせずにそのまま執筆を続行した。

そして、気付いたら夜中だった。時間が飛んだ。自分の集中具合に驚いた。

 

一応入浴はして、その流れで少し寝ることにした。

まだ完成度は50%くらい。戦いはもう少し続きそうだと判断し、あまり眠気もなかったが寝ることにしたのだった。

 

29日朝。

なぜか7時前に目が覚めた。しかも、頭がめっちゃスッキリしている。

朝はめっぽう苦手だ。いつもはベッドの中で二度寝、三度寝と、何度も“目覚め”を繰り返してようやく起きるというのに、今日ときたらあまりに清々しい目覚めだ。

あまりに目覚めが良かったので、二度寝はせずにそのまま起床することにした。

 

身体が重い感じもない。

いつもと比べて短時間の睡眠だったが、しっかりと休めたようだ。

 

部屋着に着替え、髪をしばる。

空腹感もなかったので、そのまま作業に入った。そして没頭した。

 

また時間がワープした。もうお昼の時間になっている。

 

昨日の夜も、今朝も、何も食べていない。口に入れたものはおやつのチョコを2,3粒と、紅茶だけだ。そのことを分かっていたので、私はお昼ごはんを食べることにした。

進捗状況から考えてあと3日は頑張ることになるのは明白だった。ここで根詰めて、完成する前に力尽きてしまっては意味がない。私は心の底から修士生活を終えたいのだ。そのためには修論を書き上げるほかない。

実はクリスマス前に胃腸炎になっていた。これ以上体調を崩してしまうわけにはいかない。そのためにも、食事はきちんと食べ、必要な睡眠は摂る必要があった。

 

昨日の昼からほとんど何も食べていない状態だったので、冷凍ご飯をつかって卵雑炊を作ることにした。胃をびっくりさせないように、ゆっくりゆっくり噛みしめて食べた。久しぶりにあたたかいものを食べた気がした。

 

PCに向かってひたすら文章を打つ。打っては消し、打っては消しを繰り返す。まさに破壊と創造だ。

言葉を探し、当てはめて、しっくりこないが、ひとまず前へ進む。

 

あと3日である程度完成させなければいけない。

 

>>>アホな世界。いよいよ本格化…!明日につづく>>>

修論執筆の1週間③

2日前から続く「修論執筆の1週間」

今日は第三話です。

 

>>>つづき>>>

 

28日の昼、いつも通り(といってもここ数日だけのことだが)気分転換もかねて昼食の調達のためコンビニに出かけた。昼食とおやつ。おやつにはお気に入りのガルボと、ここ最近のお菓子の消費っぷりを鑑みてチョコがたくさん入ったファミリーパックも買っておいた。

 

この時の修論の進捗状況は、ざっと3割程度。土台は完成したが、まだまだ書かなきゃいけないことが山のようにある。粗削りも粗削り。むしろここからがやっとスタートだ。

 

例えていうなら、これまでは、山に行って木を切って来る作業をしていた。どんな木材なら使えそうか、とか、どんな木なら伐りやすそうか、とか、どれくらいの量の木材が必要なのだろうか、と考えながらひたすら木材を生み出す作業。近くに面白そうな岩があったら、それも一応削って持って帰る。何かに使えるかも、という期待を抱きながら。

 

そして28日の昼からは、集めてきた材料を、設計図を見ながら必要な形に成形したり、材料全体を見渡して、設計図の方を少し修正してみたり、そういう作業を始めたのだ。「設計図通りのものを完成させる」ことよりも、とにかうなんでも良いから作れるものを作って形にして残す、ということが大切だ。(私の進捗状況を心配した指導教官が「修論は提出することが大切です」というメールを送ってきたくらいだ。)

 

つまり、材料集めが終わり、組み立て作業に入ったのだ。やっとだ。

あと4日でどこまで出来るか…そればかりが気がかりだった。

しかし気にしている時間はない。ただ黙々と目の前の作業に集中した。

 

作業の種類が少し変わり、私の集中モードがここ数日のものとは少し変わったらしい。

どうやら私には集中モードが少なくとも2種類あり、その1つは“組み立て作業”の時に入るモードのようだった。当時の私はそのことにはまったく気付いていなかったし、今でも知らないうちにそのモードに入ることが多い。

そのモードに入ると、平気で何時間もPCの前でカタカタしていられる。これは文章を書く時に限った話ではない。全般的に何かを“組み立てる”時、気付いたらこのモードの集中に入っている。

そして、その段階に入った私の集中力は結構すごいと自負している。そういえば幼い頃からそうだった。時間が長いし、周りの様子とかも分からなくなるし、何より疲れない。

こういうの、職人気質の人に多いのではないだろうか。

 

そんなわけで、私は28日の昼にセブンイレブンに行って帰ってきてから、職人さながらの集中モードに突入したわけである。

 

これがこれから先に待ち受けるアホな経験の入り口だった。

そんなの気付くわけもなく、私はずんずん入り込んでいくのだった。

 

>>>いよいよアホな経験始まるか?!明日に続く>>>

修論執筆の1週間②

 

sechigara.hateblo.jp

 ↑きのう書いたもの↑のつづき。

 

 

クリスマスが終わって2,3日は、わりと健康的に集中した。

 

朝起きて、机の上に広がった資料が目に付く。やらねば…とゆっくりエンジンがかかる。冷凍してあった食パンを焼きつつ、ノートPCを立ち上げる。ついでにお湯も沸かす。少し机で作業をしていると、食パンが焼き上がるのでキッチンへ移動。コンロの横でバターとジャムを塗る。そうしていると横でお湯が沸き始める。紅茶を淹れて、トーストとマグカップを持って部屋に戻る。朝ごはんタイム。適当に机の上にスペースを作り、小さな幸福を噛みしめる。簡単な朝食だが、1日のスタートには最適だ。食べ終わったらすぐにキッチンへ行き、そのまま皿洗い。面倒くさい作業があとでまとまって襲い掛かってこないように先手を打つ。マグカップにお湯と茶葉を足し、紅茶を濃い目に入れ、ここから本格的に作業開始である。このマグカップ、500mlは入る大きさだ。

 

朝、と書いたが、まぁいつも9時とか、遅いと10時とかになる。

そのまま食パンのエネルギーを使って、昼過ぎまで作業を続ける。

 

昼過ぎになると少しお腹が減り、集中力も切れだす。いよいよ集中力が切れた、というタイミングで、気分転換もかねてマンションから徒歩30秒のところにあるコンビニに行く。そこで、昼食とちょっとしたおやつを買う。お弁当の時もあるし、冷凍食品の時もある。おやつはだいたいガルボ。たまに奮発してガトーショコラを買う時もあった。コンビニが完全にお正月仕様になっていて、自分だけが世間の時間の流れに乗れていないようなそんな感覚になりながら、家に戻る。

外の冷たい空気で身体と頭を冷やし、少しの爽快感を得る。

 

昼食をとった後も真面目に作業に取り掛かる。こちとら卒業したくて必死だ。

 

マグカップの中が空になると、またお湯を沸かす。キッチンに向かう時もまた、気分転換になる。滞った血液が全身に巡るからだろうか、キッチンに立つと頭がすっきりしてアイデアがまとまることが多い。

 

温かい紅茶を飲みながら、買っておいたおやつをつまむ。PC画面とにらめっこしながら、口の中にチョコレートの甘味が広がる。紅茶の温かさが広がる。

 

そんなことを繰り返していると、次は夜を迎える。夕食が食べたくなる。きっと集中力が切れたのだろう。

もう暗いし寒いのでコンビニは諦める。パスタを湯がき、レトルトのミートソースをかけて食べる。雑な食事だが、致し方ない。それに、なんだかんだミートスパゲティは好きなので特に嫌ではない。

 

夕食後は、そこまで根詰めて作業はしない。

先輩への状況報告とか、資料の整理とか、これまで書き上げたものを読み返したり、軽微な修正をしたり、体裁を整えたり、明日はこれをしようと考えたり、そういうことをして時間を過ごす。

 

そして入浴。シャワーも良い気分転換になる。キッチン同様、ここでも新しいアイデアが生まれることが多い。しかしキッチンとは違いメモで残すことが出来ないため、せっかくの新しいアイデアが疲れと共にシャワーで流れてしまうことも少なくない。

 

お風呂からあがって、気分が良ければ作業を再開するし、そうじゃなかったら机の片づけをする。PCは閉じ、タブレットもケースにしまう。机と床に無造作に広がった資料も整理する。そして机の上に、PCと資料をあえて乗せたままにしておく。資料は該当の箇所を少しだけ広げておく。起きた時にすぐに『あぁやらないと』と思えるように。

 

そしてまた朝を迎えるのだ。

 

こんな1日を、12/26から12/28の昼までは繰り返していた。

 

>>>いよいよアホな体験の入り口へ!明日につづく>>>