転送届を出していたのに郵便物が届かなかった話
今から半年ほど前の話だが、ふと思い出したので書こうと思う。
郵便で手紙を送る、ということを想像してみてほしい。
……うん。田舎に住むおばあちゃんにしよう。
電話でも良いけれど、最近耳が遠くなっていて、電話は難しい。
ちょっぴり怖がりなおばあちゃんは、スマホにも手を出していない。
会いに行けたら一番だけどなかなか時間が取れそうにない。
そうだ手紙を送ろう。
そう思ったあなたは手紙を書き、最近の写真を同封し(孫の顔を見て喜ばないおばあちゃんはいない)、切手を貼ってポストに投函した。
『これで完了!』
数日後、おばあちゃんは孫からの手紙に心が温まることだろう。
そう思うはずである。
書いた手紙をポストに投函し、『よし!完了!』と思うはずだ。
ここで誰が『きちんと届くかなぁ…』と本気で心配するだろうか。
届いて当たり前。おばあちゃん家のポストに入って当たり前。
幼い時から慣れ親しんだ郵便システムに何の疑問も抱かないのは当然のことだろう。
私は半年前、エントリーした企業からの受験票が届かない、という事態に陥った。
長引いた夏の暑さがようやく落ち着いた10月のある日。
仕事がひと段落してスマホを見ると、見知らぬ番号からの着信履歴が残っていた。しかも3回も。
どこだろう…と思って、留守電を聞いてみる。すると、2か月ほど前にエントリーした企業からの連絡だということが分かった。「至急ご連絡下さい」とのこと。
転職活動のため、いくつかの求人に応募していた。その1つだった。
なんだろう、と思いながら、問い合わせてみた。すると…
「受験票をお送りしたんですが、もしかしてお引越しされましたか?」
たしかに8月にエントリーし、9月に引っ越しをした。応募当時はまだ前の住所だったはずだ。
「9月に引っ越しました」
「あー、やっぱり。今その住所に住んでいる人から連絡があって、返送してもらっているところなんです。新しい住所を教えてもらえますか?もう一度お送りしますから」
慌てて新しい住所を先方にお伝えする。
これから採用面接に挑む企業に対してもうすでにお手数をおかけしているという状況に、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
が、しかし、おかしい!!!!!!!
だって私、ちゃんと転送届を出したもん!
引っ越す前に!!!!
こういうことがないように!!!!!!
引っ越してからすでに1か月が経っていたが、その間に何度も転送シールが貼られた郵便物が届いていたのだ。転送サービスの申し込みがきちんと出来ているかどうかは、もう検証済みである。
一応その旨も伝えた。私の非ではないことは伝えておきたかった。
「転送願いは郵便局にすでに出していて、これまでもきちんと届いているのですが…どうしてなのでしょう。お手数をおかけして申し訳ありません」
すると相手も「そうなんですか?!」と。「では、郵便局側の手違いですね」と言ってくれた。
さらに「では、こちらで確認してみます。転送できるはずです。もし届かないことがあっても、試験当日、今から言う場所に直接来てくださって大丈夫です。住所は…」と話が進んだ。
『確認してみる、ってどういうこと??』と今でも疑問だが、なんと数日後、「郵便局側の手違いだったようです。新しい住所に転送してもらえるそうなので、数日後には届くと思います」と連絡が入った。
こんな確認、出来るんだ…。すごいね、郵便局。すごいね、あなた。
そしてまた後日、今度は郵便局の方からも連絡があった。その電話には移動中だったため出ることが出来ず、留守電にメッセージが入っていた。
「○○様からの郵便物を△△様(私のこと)の旧住所に配送してしまいました。郵便物は現居住者の方からお預かりして、これから転送処理をしますので、ご確認をお願いします」という内容。
なんで私の電話番号を知ってるんだろう…?と疑問に思いつつ、個人情報云々について問い合わせする気にもなれず、結局スルーした。
そんな感じで、結局2次試験に間に合う形で受験票は無事に新しい住所に届きました。
めでたしめでたし。
という話。
今回の件で思うこと。
現居住者の方、本当に良い人で良かった…!!!
明らかに「多分重要なものが入っているだろうな」という感じの郵便物だったというのもあるだろうけど、本当に、適切に対処してくださった現居住者の方には感謝しかない。しかも、わざわざ企業に連絡までしてくださったということだろうから、まさに神対応。こんな人に私もならねばならない。
「ぷぷ…。前の人のやつだ。開けちゃお~」「捨てちゃお~」とか思う人じゃなくて本当に良かった。
なんで電話番号を郵便局が知っているの…?
これって郵便局の人は調べられるっていうこと?それとも、今回のやりとりの中で、企業側が必要と判断して郵便局に私の電話番号を教えたということ?どっち??どちらにせよ、私の知らないところで私の電話番号が知られているというのはこのご時世なんだか怖い話である。
郵便サービスってめっちゃ重大なサービスなんだな…
今回の件があって、郵便が届かないって本当に致命傷になりかねないな、と思った。
この一件で、私の企業からの心象はいかに…?!?!とか思ったし、結構重要な書類が普通に郵便で送られてくるし、“郵便が届かないリスク”なんて微塵も考えたことがなかった。
どうりで、郵政民営化される前まで国が担っていたわけである。こりゃ重大な事業だ。
「郵政民営化」って、私が小学生の頃に叫ばれていた法案だった。小学生だった私は何の意味も分かっていなくて、とりあえず「郵政民営化」というワードだけが記憶に残っている。
その当時はきっと賛否両論あったはずだが、その“否”の理由が今回の件でちょっと分かった気がした。
これまで国が責任を持ってやっていた事業を、民間の企業にお任せしようとしていたということだもん。重要書類がきちんと届かなかった場合に、何か損害が出たとしたら、民間で保証されるのか…???とか思うと、そりゃ賛成できない人もいただろうなと推測。怖すぎるでしょ、普通に。
今、水道の民営化が話題に上がっているけれど、これも似たような話だと思う。
ここで熱い意見が書けるほど情報を持っていないし、整理も出来ていないから今回は書かないが、今回の「郵便が届かなかった事件」で感じた気持ちは、水道の民営化を考える際にも使える気がする。
水って生きていく上で絶対に必要なライフラインだから、あんまりテキトーに考えてちゃいけないよなぁ。そう思うと、私もちゃんと勉強しなきゃいけないなぁ、知らないことが多すぎるなぁ、と反省するばかりだ。
毎日きちんと届いている郵便物。
もしかしたら届いていなかったものもあるのかも…?とか考えだすと怖すぎるし、キリがないのでやめにしよう。そうしよう。