井の中の蛙 ジンベイを知らず

されど、ほにゃららの深さを知る

仕事の話っていつするのが正解なの…?

セクハラ、パワハラ、マタハラ、なんやらかんやら、色んなハラスメントが話題に上がるようになって久しいが、最近ちょっと『もしかして私、パワハラしてる…?』と不安になるようなことがあったので書いてみようと思う。

 

 

話は数日前。

我が家にぼてちんの後輩が遊びに来てくれた。

ぼてちんもその後輩くんもカレーが好きで、よく家で作っている。そこで、お互いにカレーを作って持ち寄ってカレーパーティをしようということになったのだ。

 

ライスをお皿の真ん中に線を引くように細く盛って、その両サイドにそれぞれのカレーを注いだ。めっちゃ豪華でおしゃれで素敵すぎるカレーが出来上がった。

 

後輩君のカレーが美味しすぎて、ぼてちん、ちょっと悔しそうだった(笑)

作り方の違いとか、スパイスの違いとか、あらゆることを後輩君から聞いて、色々と教えてもらっていた。

 

からしたら、どっちもお店みたいな味がして絶品だったのだけど。

 

 

カレー食べて、お喋りして、お酒飲んで、お喋りして、お菓子食べて、お喋りして、レコード漁って、お喋りして。

その後輩君は結構長い時間、我が家にいてくれた。久しぶりに後輩君と会って、色んな話を聞けたのは私としてもとても楽しいことだった。

 

 

その延長で、ちょっと仕事の話になった。

 

何を隠そう、私は仕事のことを考えるのが大好きである。まぁ、私にこれといって趣味もないということも災いしているが、仕事をしている時が一番楽しい。ましてや後輩君のしている仕事は、私が1年前までガッツリと関わっていた児童福祉分野。

どんなことを考えながら仕事をしているのかとか、仕事をしてて楽しい時とか、なんかそういうことを聞きたくて仕方ない。

 

すると、先ほどまで饒舌だった後輩君が、明らかに反応スピードが落ちたのだ。返答に時間がかかるようになった。

ちょっと前までカレーの話やレコードの話、音楽の話であれだけ口数多く、ポンポンと会話のキャッチボールが出来ていたのに、途端にスピードが落ちた。

 

その時に思ったのだ。

(職場は違うので私は先輩というわけではないが)『これって今、パワハラになってる…???』

 

 

「仕事の話って嫌い…?」と恐る恐る尋ね、「楽しい時間を過ごしてほしいと思っているから、嫌いだったら申し訳ないと思って」と付け加えた。

 

後輩君は優秀な人で、きちんと「嫌いではなく、ただ、自分の仕事に関して言葉にすることをあまりしてこなかったから、どう言えば良いのかと考え込んでしまう」と教えてくれた。

 

これが、私にものすごく気を使ってくれた故の返答だとしたらそれはもう本当に心の底から申し訳ない気持ちではあったが、ありがたく彼の言葉をそのまま受け取らせてもらうことにした。

しかしやっぱり、相当なエネルギーを消費させてしまっているのは事実だったので、その後は仕事のことについて話を深めることはやめた。

 

 

後輩君は「普段、仕事以外で仕事の話はあまりしない」と言っていた。仕事のことを考えるのは、仕事からの帰り道くらい、と。

 

 

 

私が社会人になってすぐの頃を思い返すと、先輩との話と言えば、共通の話題である仕事の話になることがほとんどだった。

別に私が仕事熱心だからではない。ただ、趣味のない私には、共通の話題がそれくらいしかなかったのだ。

 

これまでの仕事の失敗談や、今読んでいる本の話、仕事に役に立ちそうな学会がいつあってどんな内容なのか、心理士としてどう立ち振る舞うのが良いのか、色んなことを教わった。そうやって、先輩の考え方とか価値観に少しずつ触れていった。仕事場ではちょっと堅苦しくなるような話も、帰り道だとざっくばらんに話してもらえたし、私も質問がしやすかった。

 

先輩と一緒にいなくても、私は朝も夜もいつも隙があれば色々と考えていた。

もちろんその日の反省とかもたくさんあったが、それよりももっと根本の、自分の価値観とか教育観とかそういうことを考えることが多かった。自分の中で当たり前すぎて今まで気にもとめていなかったことを振り返り、それをどうにか自分の言葉にしてみるということをしていた。そして、チャンスがあれば先輩に自分の考えを聞いてもらった。そうやって、知らないうちに自分の中に根付いていた価値観に少しずつ気付いていったのだと思う。

 

仕事について考えることと、自分がこれからどうやって生きていくかについて考えることは、ほとんど同時だったし、内容も繋がっていた。仕事のことを考えることは、自分の人生について考えることと等しかった。

私が心理士という仕事をしていて、児童福祉という分野で児童虐待やDVなどが身近にある現場で働いていたからなのかもしれない。仕事をしているとどうしてもクライエントの生活環境や考え方に触れる機会が多いし、それは自分のこれまでの人生やこれからの人生と照らし合わせる作業でもあった。

 

少し話が逸れたが、私の知っている“仕事を一緒にする人との関係”って、こういうものだ。

話題は仕事に関連したものばかり。

 

だから、むしろ逆に、仕事相手と仕事以外の話をすることに違和感がある。

休日は何をしているのかとか、彼氏はいるのかとか、趣味は何かとか、そりゃ相手から聞かれればなんでも答えるし、相手が話してきたら聞く。ただし、こちらから積極的に相手の近況を尋ねるつもりはない。なんとなく、仕事相手のプライベートを知ろうとすることに抵抗がある。見てはいけない部分というような感覚がある。

 

職場の人と仲良くなるために自分のプライベートをさらけ出すのではなくて、仕事をしているうちに気が合って、その結果プライベートまでさらけ出すようになった、という順番の方がしっくりくる、という感じだ。

 

 

仕事はそれなりに意思疎通が出来ていないと進まない。

特に、児童福祉分野とか教育分野とか、色んな人と関わりながら、誰かの生活を支援するような仕事となるとなおさら『その人がどんな人なのか』というのを知っておきたいと思う。

『その人がどんな人なのか』は、プライベートな部分のところを知っておきたい、というわけではなくて、仕事に対してどんな考えを持っているのかを知りたいということである。

 

 

別に、“仲良くなるために→飲み会をする”のではない。“仕事をしやすくするために→飲みに行く”のでもない。

ただただ、仕事を一緒にしているうちにその人のことが気になって、もっと話したいな、もっと色々と聞きたいなと思って、帰り道が一緒になったり、ちょっと寄り道をしてみたり、飲みに誘ったりご飯に行ったりする。そうやって少しずつプライベートな部分が出てくる。

 

そういう順番が私の中では一番しっくりくる。

 

そう思うと、じゃあ仕事の話って、今の時代、いつするんだろう…。

特に後輩を育てるという立場になった時、どうやるんだろう…。みんな、どうやってるんだろう。

業務時間内に出来る話といえば、きっと目の前の仕事の話に限られるだろうし、話せる時間も限られている。仕事内容がただの作業なら、その話は業務時間内で済ませれば良いのだけれど…そうもいかないだろう。

 

別に話さなくても大丈夫なのかな。ってかそもそもこういう話をすること自体が寒いのかな…時代遅れなのかな(笑)

 

 

ま、今は一人職場で後輩とかもいないから、私が今心配することではないのだけど。